少しフシギな読書メモ

SF中心の読書記録。心の琴線に触れた文章をピックアップしていきます。

希望の国のエクソダス [村上龍]

忘れちゃいけないことだって思っていても、時間がたつとどんどん薄まっていって、きっとナマムギのことだって、ああやって薄まっていくんだなと思ったら、じゃあ、薄まっていかないことなんか世の中にはないんじゃないかと思って、そういう感じで死んでいくのかなっていうか、逆に怖くなって。でも、ナマムギがいるところは遠いです。すごく遠いということが分かりました。(P51)

感動したこと、こうしようと心に決めたことでも時間が経つとどんどん薄れていってしまう。特に大人になってからは気持ちが薄れるのが早くなっている気がする。黒澤明の「生きる」のラストを想像すると恐怖すら感じる。作中の中学生たちは実際に行動に移した。そして自分たちの世界を変えていく。少しでも彼らを見習おう。気持ちだけでは何も変わらない。

この国にはなんでもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない。(P314)

10年以上前の作品で村上龍が語った希望のない日本、今の日本には希望はあるのだろうか?いろいろ考えさせられる。

2002年秋、80万人の中学生が学校を捨てた。経済の大停滞が続くなか彼らはネットビジネスを開始、情報戦略を駆使して日本の政界、経済界に衝撃を与える一大勢力に成長していく。その後、全世界の注目する中で、彼らのエクソダス(脱出)が始まった―。

 

希望の国のエクソダス (文春文庫)

希望の国のエクソダス (文春文庫)